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マッドモンキーの原点

マッドモンキーの原点

2004年12月 単身で東南アジアのタイへ

当時、日本の経済状況は、バブルが崩壊して“失われた10年”といわれた時代で景気も悪く、私達世代は就職氷河期で、特に私が住んでいた田舎、地方などでは、ほとんど就職先が無く、地場産業やパン屋やパチンコ屋にでも就職できたらまだいいくらいのものでした。

それに比べてタイは発展途上の国で、あらゆる産業が上昇気流にある状態で景気もいい。

タイはその当時、アクセサリーや雑貨、革製品の一大生産地として有名で、 アクセサリーや革製品に興味をもっていた私は将来的にそれに携わる仕事もしたいなと思っていました。

そして、2004年の12月に単身で熊本からタイへ渡りました。

そんな、一大決心ができたのも勤めていた会社がつぶれて、自分がやりたいことをやろうと選択できるチャンスが来たからでもありました。

今でも思い出します。たった100万円を片手にタイへ渡ったんです。

そして、いろんなカルチャーショックをうけながら日々生活していました。当時はまだスマホもないし、インターネットもそこまで普及してなかった時代で情報も今ほどない社会ですね。
2004年のタイ、バンコクは物価も安く、エネルギッシュでそのときの日本と比べてもすごく活気があって熱力を感じました。

当時はドンムアン空港でしたがこの国際空港には世界中の国籍のいろんな人種があふれかえってました。
アジア世界最大級といわれるチャトゥチャック市場では東京ドームの10倍もの広さがある敷地に満員御礼の人だかり、カオサンという安宿外には外人達がたむろしたジャンキーの集いの場があり、高級住宅街や、デパートの周りには一杯100円ほどの激安ラーメン屋や食べ物屋台が連なってたり、夜は眠らない街、バンコクといわれたように24時間ネオンがきらめいていたり、と凄いものでした。

ですが、最近は景気の悪化を背景にいろんなものが制限され、廃止されよく言う“古き良き時代、タイ”が終わりを告げているようです。

本当に残念ですね~。
私もその悶々としたバンコクの熱気の中で、いろんな事を考えながら生活していました。
そして、ある市場でとうとう僕が求めていた革財布と出会っちゃうんです。

露店商Y氏との出会い

革物や、アクセサリー、ブレスレット、衣類、骨董品、雑貨など売っている、ある市場がありました。
そこに革物のハンドメイドの蛇革、トカゲ、クロコダイルなどの財布、バッグ、ブレスレットを道端で売っている露店商がいました。

まず、その露店道を歩いていると目にパッと入ってきたのが、フェイクか本物か分からないがパイソン模様のバッグが吊り下げられた露店。“あ、あっと”思い、近づいていったのを今でも覚えています。

これが、まさに私の人生を決めるといってもいい出会いでした。

その露天商の主は50歳くらい、髪は長髪で束ねて、長身で厳つく、まさにインディアンのようなイデタチをしていました。
そして、私が見つけて寄っていくと、スッとやってきて、“Are you japanese?”
“you want this?”と言って人懐っこい表情を見せ付けてニヤリと微笑んできました。
この主が、私がはじめて取引をはじめることになるYという初老のタイ人だったのです。

原点のリザード財布とパイソンバッグ

露店に並べている革物は、どれもこれもハンドメイド品。
長財布、二つ折り財布、ブレスレット、指輪、ウエストバッグ、ショルダーバッグ。
革の素材はパイソン、コブラ頭つき、一部クロコダイルレザーを扱っていました。

はじめて見たので、目が血走っていたんでしょう。

それを見透かしたかのように、Y氏は“来た来た日本からカモが!”みたいな感じでどんどんしゃべりかけてきます。

私もどれもこれも興味があったのでいろいろ聞きまくって、値段を聞くと意外と
安いなーと思いながら、悟られないように“ふーんふーん、そうかー。”などと笑みを隠し、シメシメ安く買えるぞ!と思っていたんです。

最後には高く売りつけられて、ぼったくられているのも知らずに。

結局、そのときに買ったのは茶色に染めたリザードの二つ折り財布とパイソンのウエストバッグ。

・リザード(トカゲ)の茶色染めの二つ折り財布(3,000円)
・ナチュラルパイソンのウエストバッグ(8,000円)くらいだったでしょうか、

衝撃の安さと大好きな物が手に入ったことに顔がニヤケていた事でしょう。

あの時の胸の高鳴りを今でも覚えています。

15年前のあの時買ったパイソンバッグは今でも大切に持っています。やっぱり、このエキゾチックの類が好きなんですねー、昔っから。

実はこれをまた復活させようと思ってます!(上の画像)

実際、日本ではまずこの値段では買えませんが、当時のタイは物価も安く、
そして今分かったことは、まだ安く買えたという事。
実はちょっとぼったくられてたんですねー。

拘り、そして自信につながり、売るパワーに変わる!

その時はとても衝撃的で衝動買いしてしまったのですが、今ではたいしたことない財布で、よくこんなものいいと思って買ったよなー、と思ってしまいます。

外側は爬虫類の革ですが、中身がペラペラの安っぽい牛革で、色も自分で染め出したようでムラがある財布などでした。
さらには、高く買わされていたのに気がつかずに。また、作ってくれとお願いしていた事を思い出しました。

あー、懐かしい。
でも、何か手作りの温かみを感じたんです。
なぜかY氏が作った物に私は魅かれたんだと思います。

今、思い返せば、きっちりと綺麗に仕上げられた大型生産ではない、『ぬくもり、温かみ』があったように思います。

今では多人数の工房で分業にて作業するため、それぞれにプロがいて作るので仕上がりもムラがなく綺麗に仕上がります。
ただ、私どもの革製品は人が作るハンドメイドのはず。ミシン機械だけでなく人が編みこむ部分、人の手を加えないと作れない部分も数多くあるはずです。

そして、人が手作業で行う所にこそ、その作り手の思い、いわゆる魂が入ると思うんです。
漠然とですが、そうゆうパワーがY氏の作った物にはありました。
私はそこに魅かれたように思うんです。

Y氏のおやじの自信満々な口調はそこからきているんです。
誰かから言わされているのでもなく、ウソでも何でもない、真実の語り。
実際、Y氏が自分の個室で作りあげているので、どこが難しかったとかどこが拘りなのかとか、どの皮の部分を使ったほうが綺麗に見せられるなどの、いろんな説明ができる。

だから自信満々に説明するんです!
そこに買い手は圧倒される、パワーに圧倒される、飲み込まれてしまうんですね。
これは商売の基本なのかもしれない。  

拘り→自信→売るパワーに変わる。

だからほとんど値下げはしない。その価値でしか売らない。

私は改めて気づかされた思いがしました。

魂が宿るものづくりを

あまり景気も良くなく、売上げも低迷している昨今、今一度、いろんなことを考え直す必要に迫られている。

そんな時、マッドモンキーの原点に振り返ると、
いろんな復活のための要素を教えてもらいました。
また反省しなければいけない事が浮かんできました。
そして、一番気がついたことは、昔に比べて私自身の熱やパワーが落ちているということ。

商品は綺麗になり洗練されていくのですが、
そのパワーが落ちているので物に魂が乗り移ってないんです。

これからは物に魂を吹き込む!これでいきます。

今一度、原点回帰!です。

但し、世の中のせいにしたくはないですが、タイの経済が悪くてそのパワーがタイ全体でなくなっているのが現状なんですね。

でもやるしかない!

その後

Y氏とはそれから、2,3年取引を重ねていろんなオリジナル財布、特にバイカーズウォレットを作りました。
ずいぶんといろんな物を作りましたが、中でも大ヒット作が全体をサドルレザーにカービングを施し、アクセントでクロコダイルレザーを縫い付けた、当時は無かった斬新なスタイル。

これがずいぶんヒットしたんです!彼もあれでずいぶん稼いだんじゃないでしょうか。

私の他からも、たくさんのオーダーを請け負っていましたから。
その後は、私も様々な取引先を発掘していきながら、連絡を取らなくなりました。

先日、連絡が取れないので、Y氏の知り合いに聞いてみたら元気でやっているらしい。おじいちゃんは孫の世話で大忙し、みたいってことでした。


追伸;トラの皮やクロコダイルの皮を部屋に預けてたけど、どこにいっちゃったかなー。
たぶん、もうすでに捌いてるでしょうね。きっと。
まあ、いいよ。世話になったし!