イタリアといえばパスタ、古代都市ローマ、ファッションの街といろいろ想像しますが、“革”という単語も思い浮かびますね。
逆に、“革”と言えばイタリアンレザーと言うくらい革の産地として世界でも有名ですね。
では栃木レザーはどうでしょう?栃木レザーも日本では、質の良い、いい革として有名ですが、今では世界でも輸出されているようで日本では超人気レザーとして、急速に知名度を上げています。
では、この栃木レザーとイタリアンレザーの両者、ズバリ!どちらが凄いのか?
また、革の素材自体はどこが、どう違うのか?探っていきます。
栃木レザーとイタリアンレザー、総合的に判断するとイタリアンレザー?
結論から言いますと、「イタリアンレザーの方に軍配が上がりそうです。」と言ってしまいそうですが、
実はそう簡単には判断できませんし、あまりにもおこがましいです。
要するに結論はいずれも、“すごいレザー”であるという事です。
歴史の古さ、知名度、レザーの種類など様々な分野で総合すると、イタリアンレザーの方に分があると言えますが、
そもそも栃木レザーのタンナー(革なめし業者)は1社のみで、イタリアンレザーのタンナーは数十社もあり不公平ですね。
もともと比較することが間違っていたようです。
ここで書くのをやめようと思いましたが、せっかくなので比較してみましょう。
それでは前述した、歴史、知名度、レザーの種類をそれぞれに見ていきましょう。
歴史
栃木レザーはメーカーが創業されて80数年、イタリアンレザーは700年の歴史があります。
イタリアンレザーは13世紀には、イタリアのフィレンツェに工場や研究所が存在しています。
フィレンツェのサンタクローチェ地区がイタリアが誇る伝統的な皮革産業地帯になっています。
国際基準よりも厳しい品質基準を定めた有名なタンナー(革なめし業者)が20社ほどあります。
歴史が古いからいい物を作るとは限らないですが、幾度も盛衰時期を経る中で努力を続けてきたようです。
栃木レザーのメーカーも同様に苦しい時期を乗り越えて、伝統の技術を継承しています。
知名度
イタリアンレザーといえば「最高級レザー」です。
グッチやプラダなど他にも数々の有名ブランドが取り扱うレザーですが、現在ではボッテガ・ヴェネタなどはとても人気がありますね。
門外不出のベルルッティ(Berluti)も、このイタリアンレザーに魅了され、商品化しました。
このように有名ブランドがこぞってイタリアンレザーを採用していくと、1900年代よりグングンと知名度が上がっていきます。
栃木レザーは現在、日本ではとても有名です。財布、バッグ、小物類と様々な物が栃木レザーで作られています。10年くらい前まではその名をあまり聞きませんでしたが、
最近では非常に人気があり、高額で取引され、偽物まで出てくる始末です。
また、海外への販売もされているようです。
拘りのベジタブルタンニン鞣しの伝統と確かな技術は、日本オリジナルブランド革として、これからもさらに世界で活躍してゆくでしょう。
そういう意味では知名度はイタリアンレザーですが、これからの未来への勢いは栃木レザーとも言えます。
レザーの種類
レザーの種類は先程述べたように、栃木レザーは1社でイタリアンレザーは20社に上るため、イタリアンレザーの方が種類が豊富なのは当然です。
イタリアンレザーの革の種類は様々で、「マットーネ」「ミネルバボックス」「ミネルバリスシオ」「プエブロ」「オリーチェ・バケッタレザー」「ブッテーロ」「エルバマット」「アリゾナレザー」などがあります。
それぞれに加工の方法も様々で、革の質感も全然違ってきます。
栃木レザーは、硬めの革サドルレザー、オイルをたくさんしみ込ませたソフト仕上げのプルアップレザーやバケッタレザー、オイルの入っていないヌメ革などがあります。
栃木レザーとイタリアンレザー、革の違いはどこにある?
イタリアンレザーの方がどちらかというと栃木レザーよりもオイルがたくさん入っていて、オイリー感がありしっとりしています。
これは栃木レザーにもオイリーな革もありますが、比較するとイタリアンレザーの方がよりオイルを染み込ませているようです。
したがって、エイジングもイタリアンレザーの方が速いでしょう。
逆に栃木レザーはオイルが浸透していながらも、どこか自然な風合いがします。
“ザ、革”と言わんばかりの革らしさ、そして変化を味わう楽しさがありそうです。
日本らしい、日本人が好むような革と言われれば、そうかもしれません。
イタリアンレザーは発色が良いので、カラーがとても美しいです。
この美しい色合いは、よくある革表面を塗料でべた塗りしたような色合いではなくて、革の中に浸透しているカラーがオイルを通して透けて見えるような透明感のある発色でとても鮮やかです。
したがって、イタリアンレザーはカラーバリエーションが豊富です。
逆に栃木レザーはそこまでの鮮やか色合いはなく、自然な風合いをかもしだしています。
また、栃木レザーは丸々牛一頭分の革を販売しているのに対して、イタリアンレザーは
牛のショルダー部分を主に販売しているようです。
ショルダー部分とは繊維密度が高く、そのためコシが強いので、製品化した時に型崩れなどが起きにくいと言われています。。
いずれにしても栃木レザーもイタリアンレザーも一流の職人が作る傑作品である事には間違いありません。
いずれも同じ「ベジタブルタンニン製法」
なぜ栃木レザーとイタリアンレザーを比較するのかというと、ただ単に人気があるからだけではなく、実は両者が似ているからなんです。
その理由はこの両者は同じ製法で革をなめして生産しているからなのです。
その製法を「ベジタブルタンニンなめし製法」と呼びます。
>>「ベジタブルタンニンなめし製法とは?」コチラから
植物の皮や幹、葉や実などを粉砕して皮と共に浸してなめす製法の事をそう呼びますが、他には“植物タンニンなめし”とかイタリアで有名な“バケッタ製法”“ピット製法”とも呼ばれます。
イタリアでは昔からこの製法で皮をなめしていますが、日本でも栃木レザーがこの製法で革を生産しています。
植物のケブラチョやミモザ、チェスナットなどのタンニン(渋み)と動物性脂肪の溶け合った液と革を投入し、じっくりとなめす事により革にそのエキスをたっぷりと含ませていく製法です。
30以上の作業工程を踏むこの製法は非常に手間がかかってきますが、仕上がりに2,3か月の期間を要します。革によっては、一年もの期間を要するものもあるといいます。
いずれも伝統と拘りを持った革であることは間違いありません。
大量生産でコストが安い、「クロムなめし製法」という、化学薬品を使った皮なめしが主流になっている昨今で、この製法は時代に逆行しているかのようです。
ですが、これからは手間と時間のかかる「ベジタブルタンニンなめし製法」で作られる革の方が重宝され、さらに人気を高めていくと思っています。
なぜなら、栃木レザーとイタリアンレザーがこれだけ人気を高めている事がそれを示しています。
人々が革本来の美しさに魅了し、環境に配慮したものに憧れる、これは人間が本来持っている本能がそうさせるのかもしれません。
環境に配慮した革づくり
両者は環境に配慮した革づくりでも有名です。
“革” は浄化され、“ 川” へと帰る
栃木レザーは、創業当初から「地域との共存」を掲げ、豊かな自然環境を守ることを大切にしてきました。そのため、排水処理には薬品は一切使用せず、バクテリアや微生物など自然由来の力を用いた、自然にやさしい循環システムを展開しています。
イタリアンレザーも同様に、常に環境に配慮しマニフェストを掲げています。
イタリアのトスカーナ州で製造されたものはすべてイタリアンレザーというわけではなく、下記の3つの認定基準をクリアする必要があります。
・定められたベジタブルタンニン(植物タンニン)なめしの製造工程を遵守する
・化学物質や重金属ではなく、植物の抽出成分のみを使ってなめすこと
・主要工程をトスカーナ州内で行う
このような厳しい基準を満たしてはじめて、
「PELLE CONCIATA AL VEGETABLE IN TOSCANA(トスカーナ産植物タンニンなめし革)」の商標が与えられ、イタリアンレザーとして認められます。
国際基準よりも厳しい品質基準を定め、その基準に満たしたものだけを「イタリアンレザー 」として認定しているのです。
これこそが、さらに世界から評価されている理由でもあり、世界最高峰のレザーとしての誇りでもあるのです。
まとめ
はじめは、どちらが凄いか、白黒つけようと思っていましたが、あまりにもおこがましくて、できませんでした。
栃木レザーとイタリアンレザーがいかに凄いか、またその違いについては多少なりとも分かって頂けたかと思います。
あとはどちらの革が好みかという事なのでしょう。
どちらも素晴らしい革なので、いずれかの革製品を使っていただき、そのエイジングを楽しんでみてください。
マッドモンキーでは栃木レザーもイタリアンレザーもどちらの革も利用させて頂いております。
実際にその革を使って物をつくっていくと、いかにいい革なのかを実感させられます。その革を使える私共は大変に幸せ者なのです。